皆様は「アール・ヌーヴォー」という言葉を聞いたことが有りますでしょうか?
これは、フランス語で「新しい芸術」を意味する言葉で、
かつてヨーロッパを中心に広がった芸術運動のことを差しています。
さて、アールヌーヴォーが広まったのは第一次産業革命の時代。
それまでは人の手でおこなわれていた作業が、蒸気機関の台頭により機械化されていきます。
作業効率を大幅に上昇させることに成功しますが、それと引き換えに
大量生産による安価で低質な製品の出回る世の中になっていきました。
そして、人々はその反動により芸術性や独自性の高いモノを求めるようになります。
これがアールヌーヴォーの起源です。
アールヌーヴォーのジャンルは、建築・工芸品・グラフィックデザインなど
芸術のあらゆる範囲に渡りました。
その特徴としてはまず「有機的で曲線的なデザイン」が挙げられます。
木の枝や蔦、花といった植物や、昆虫や動物といった生き物などを
抽象的にデフォルメし、より曲線を強調して描かれることも多くあります。
その結果、より自由で柔らかい印象を与えるデザインになっていきました。
有機的で自然の中にあるものをモチーフとするアールヌーヴォー。
機械化によってデザイン性が排除されていった中で、
生活における創造性や芸術性を取り戻そうとした結果なのかもしれません。
この有機的な曲線を描く素材として多く使われたのが鉄でした。
当時はまた新しい素材であった鉄ですが、
アールヌーヴォー特有の「自由で軽やかな曲線」を表現することに長け、
より繊細なデザイン表現への起爆剤となります。
このほか、鉄と同様に新素材として登場したガラスも多く使用されました。
アールヌーヴォーを代表する内の一人、
“アルフォンス・ミュシャ”
彼はこの時代を象徴するグラフィックデザイナーであり
今尚多くのファンに愛されるアーティストでもあります。
先月、市内の美術館で開かれた展覧会にも、多くのファンが足を運んでいました。
あまり美術品に興味のない方であっても、
彼の作品を目にする機会は多いのではないでしょうか?
女性的で柔らかな曲線と、蔦を彷彿とさせる繊細な表現が特徴的なミュシャの絵。
実物を見ると、当時の息遣いまで伝わってくるような気がしました。
建築様式としても有名なアールヌーヴォースタイリッシュな“アールデコ”と組み合わせた
インテリアも面白いかもしれません。